My favorite Three Kingdoms

三国志に特化したコラムをやりたいという思いから開設しました。演義や正史に拘らず楽しみながらやっていきます。

【連載28】嘆いても仕方ない

西暦189年に漢王室の皇帝が崩御し、まだ幼い皇帝が擁立されると、何もできない幼い皇帝を宦官(かんがん)が利用して我がもの顔に振る舞い、宮中の秩序が乱れていきました。

この事態に袁紹(えんしょう)が「宦官の振る舞いを鎮圧しなければ、神聖なる漢王室が地に堕ちてしまう!」と全国各地の将軍に協力を呼びかけたのですが、世の中にはとんでもない人物がいるものです。

その時に参加した董卓(とうたく)という将軍が宮中を勝手に乗っ取り、権力を掌握してしまったのです。しかも董卓は、その幼い皇帝を殺して別の幼い皇帝を擁立するなど好き放題に振る舞いました。

袁紹としては、全国の将軍達に協力を呼びかけて宦官を始末して貰い、再び漢王室の秩序を取り戻すつもりが、参加した将軍に勝手に宮中を乗っ取られ、さらに皇帝を勝手に殺されるという全く有り得ない展開にされてしまったのです。

しかも董卓は宦官以上に勢いがあり、誰も簡単には手が出せませんでした。

そんなある時、宮中の文官である王允(おういん)という人物が他の文官達を自分の還暦祝いに招待しました。

慕われていた王允の元には沢山の文官達が集まり、お酒も入って和やかな雰囲気に包まれていましたが、宴もたけなわの頃、王允はこう切り出しました。「皆の者、もしかすると本日はわしの還暦祝いではなく命日になるやもしれない。我が偉大なる漢王室はこれまで400年間に渡り栄えてきたが、それが宦官に操られて乱れ始め、しかも今では董卓という獣物みたいな人物に掌握されてしまった。もはや風前の灯火である。我々は今まで漢王室からたくさんの恩恵を授かり生きてきたのたが、もはやどうする事もできない。実に嘆かわしい。ああ嘆かわしい…あうぅぅ〜。」

招待された文官達も、これまでずっと自分が仕えてきた漢王室の今の有り様を思うと嘆き悲しみ、一斉に声をあげて泣き始めました。

ところが、その宴会に参加していた曹操だけが一人で声高らかに大笑いしていたのです。

他の文官達が一斉に曹操を睨みつけました。

「おい貴様!偉大なる漢王室がこのような状況の時に大笑いするとは何事だ!悲しくないのか?無礼にも程があるぞ!!」すると曹操は、「それでは聞こう。そうやってメソメソと嘆き悲しんだところで漢王室は元に戻るのか?董卓を倒す事はできるのか?私は今の漢王室の状況を笑っているのではなく、皆さんのような立派な官僚達が何もせずに、ただ子供のようにメソメソと泣いているのが可笑しくてたまらないのだ。そうやって嘆き悲しまなくても、この俺が董卓に取り入って近づき、隙を見て始末してやるさ!」

そして曹操は、失敗はしましたが実際に行動に移しました。しかし曹操の行動は後に自分自身の糧になるのです。

 

人生はどんなに勉強をしても、真面目に仕事をしても、困難な出来事に遭遇します。信じていた人に裏切られる事もありますし、逆に誰かを裏切ってしまう事もあるでしょう。

しかし、そんな時にいつまでも嘆き悲しんでいても仕方がありません。

曹操のように早く気持ちを切り替えて行動する事が重要なのです。

今の日本も三国志の幕開けの時代と同じように、今まで当たり前だった事が決して当たり前では無くなってきています。

日本政府も漢王室のように世の中の流れに対応できていません。しかし、だからと言って「今の社会が悪い!日本政府が悪い!」と嘆いてばかりではなく「自分の人生は自分で責任を持つんだ!」という気持ちで生きていくべきではないでしょうか。これは常に私自身にも言い聞かせています。