My favorite Three Kingdoms

三国志に特化したコラムをやりたいという思いから開設しました。演義や正史に拘らず楽しみながらやっていきます。

【連載27】司馬懿の戦略から学ぶ

西暦234年、三国志のハイライトとも言われている五丈原の戦いでは、魏軍率いる司馬懿(しばい)と蜀軍率いる諸葛亮(諸葛孔明)が対峙しました。

この戦いに至るまでに、司馬懿は幾度も諸葛亮の作戦に嵌まり兵士達を犠牲にしてきましたが、対する諸葛亮も魏軍に対して致命的な打撃を与えることはできませんでした。

そこで司馬懿は、今の自分を取り巻く状況と相手の状況を冷静に分析してみたのです。

「蜀軍は遠征をしながら国を挙げて攻めてきているのに対し、我が魏軍は遠征して来る蜀軍の侵攻を防ぐのが目的である。険しい山道を遠征して攻めて来る蜀軍と、それを待ち受ける我が魏軍とでは明らかに我々のほうが有利であるが、いざ戦うと諸葛亮の作戦に手こずってしまう。しかし、蜀軍は険しい山道を遠征して来ているという事は、食糧の調達がきっと困難なはずである。その為に、これまで我々に致命的な打撃を与えることも出来ずに撤退をしているのだ。指揮官の諸葛亮にとってそれが一番の悩みの種であり、とにかく戦を仕掛けて我々と早く決着をつけないと食糧が尽きてしまい撤退しなければならなくなる。まさにこれが蜀軍の弱点である!つまり、我々はわざわざリスクを負って攻めに行かなくても、陣営に篭って持久戦を徹底さえすれば、やがて蜀軍は食糧が尽きて撤退せざるを得なくなり、我々は無傷のままで勝利を収める事が出来るのだ。攻めるだけが戦ではないのさ!」

そこで指揮官の司馬懿は全軍に対し、何があっても絶対に攻めに出るな!と徹底させました。

こうなると、さすがの諸葛亮も為す術がありません。何とかして魏軍を攻めに誘い出そうと兵士達に挑発をさせます。

司馬懿の臆病者!卑怯者!それでも男か?弱虫か?悔しかったら正々堂々と戦え!あっかんべー!」

毎日のように蜀軍から挑発されると、魏の将軍達は屈辱で頭に血が上り、何度も司馬懿に対し出撃させてくれと願い出ますが、司馬懿は全く相手にしません。

すると諸葛亮から贈り物が届きました。開けてみると女性用の着物が入っていたのです。一緒に入っていた手紙には、こう書かれていました。「女々しい君はもう男じゃないから、この着物を着てごらん!ほら、とってもお似合いよ!うふふっ!」戦場に生きる男として、これ以上の侮辱はありません。部下達が殺気立ち「あの野郎!!もう許せん!行くぞぉー!」と喚き散らすのを司馬懿は冷静になだめ、その女性用の着物を着て全軍の前で堂々と見せびらかしたのです。

このような諸葛亮の挑発にも司馬懿は全く動じませんでした。

そうしているうちに諸葛亮は病死をしてしまい、蜀軍は撤退せざるを得なくなったのです。

諸葛亮は蜀軍の食糧不足だけでなく自らの死期が迫っていた事もあり、司馬懿に対して必死に挑発を続けるしかないほどに追い詰められていたのです。

 

もし自分が司馬懿の立場なら、自分の信念を貫く為に、これほどの屈辱を耐え凌いで何かを成し遂げる事ができるのだろうか。

全軍の前で女性の着物姿を見せびらかした司馬懿は、今に例えると、上司から「君のような女々しい男はこの服がお似合いだ。あはは!」と言われながらもセーラー服姿で出勤するぐらいの度胸があるのではないかと思います。

指揮官である諸葛亮の行動を分析して蜀軍の弱点を見抜き、自軍の強みを活かした持久戦を徹底させ、蜀軍からの侮辱にも耐え抜いて諸葛亮を破った司馬懿の戦略は、今後自分が何か行動する上で学ぶべき事が沢山あります。

その後も司馬懿は幾多の困難を耐え凌ぎ、長い三国志の中で最後に笑った人物なのです。

(諸葛亮ファンとしては悔しいですが…笑)