My favorite Three Kingdoms

三国志に特化したコラムをやりたいという思いから開設しました。演義や正史に拘らず楽しみながらやっていきます。

【連載26】鶏肋(けいろく)

鶏肋(けいろく)』という三国志故事成語の由来については、以前【連載22】でも紹介させて頂きました。一部修正しておさらいします。

西暦219年、曹操は定軍山(ていぐんざん)の戦いで劉備と争っていましたが、諸葛孔明を配下に得た劉備の勢いに押されて苦戦を強いられていました。追い詰められた曹操は、食事中もずっと戦況の事が頭の中から離れずにいたのですが、そんな曹操の下に部下が指示を仰ぎにやってきました。「殿、本日の伝令を聞きに参りました。宜しくお願い致します。」

すると曹操は食事をしながら上の空でこう呟いたのです。「鶏肋鶏肋…(けいろく、けいろく)」

どうやら曹操は、好物の鶏がら出汁のスープを食べていたようです。

部下は何の事だか訳がわかりませんでしたが、全軍にこの伝令を伝えなければいけません。

「皆の者、鶏肋だ!鶏肋だ!僕にはさっぱり意味がわからないけど鶏肋なんだ!」

その伝令を聞いた楊修(ようしゅう)という人物は一瞬戸惑いましたが、やがてなるほどと頷くと「直ちに撤退の準備をせよ!殿は劉備との戦を取りやめて撤退を考えておられるのだ。」と指示を出して、自らも撤退の準備を始めました。周囲の人が不思議に思い、何故そのように考えるのかと楊修に尋ねたところ、「鶏肋とは鶏がら、つまりスープの出汁に使われる鶏の肋骨である。鶏の肋骨の周りには僅かに肉が付いていて、それをシャブって食べるとそれなりに美味しいのだが、それでは腹は満たされない。鶏肋は捨てるにはもったいないが、かと言ってそれを食べたところで大したこともない。つまり、この劉備との争いに勝てないのは惜しいが、無理に争いを続けて勝ったところで得られる物も少ない。だから劣勢の今が撤退の潮時という事なのである。」と持論を展開しました。

この楊修の勝手な振る舞いが曹操の怒りを買い処刑されてしまうのですが、結果的に楊修の判断は的を得ており、後に曹操は楊修を処刑してしまった事を後悔するのです。

 

鶏肋とは、『捨てるには勿体無いけれども、取っておいてもあまり意味が無いもの』という解釈になります。

例えば買い物に行ったり外食をすると、会計の時にポイントカードを貰う事がありますが、ふと気が付けば、財布の中がポイントカードだらけになっているなんて事はないでしょうか?

そして、そのポイントカードを見てみると有効期間が今月末とか今週末など色々あり、「このまま有効期間が切れて使えなくなると勿体無い!」という理由で、特に必要が無い物を購入してしまったり、大して食べたくもないのにラーメン屋に入った事がありました。

その時は得した気分になりますが、長い目で見ると無意識のうちに無駄な買い物をしている事になるのです。

つまり、ポイントカードとは消費者が得をするように思わせて購買意欲を掻き立たせ、無意識のうちに余分な物まで購入させるという店側の巧みな戦略と言えます。
この『買い物』という行為一つとっても、選択肢の主導権を他者に奪われてしまっています。

 

自分にとって本当に必要な物は何なのか、また本当に大切な人は誰なのかを、他者に惑わされずに自分主体でしっかりと見極めるべきであるという事を、私はこの『鶏肋』という言葉から教わりました。