My favorite Three Kingdoms

三国志に特化したコラムをやりたいという思いから開設しました。演義や正史に拘らず楽しみながらやっていきます。

【連載25】組織に属するメリットとは?

重要な業務や複雑な業務というのは、要領の良い優秀な人物に任される事が多いと思います。その方が上司も楽で安心だからです。もちろん新人や関係のない他の部署の人間にそのような業務を任せる訳にはいきません。しかし、安心して重要な業務を任せていた人物に何かしらの問題があった場合、組織全体がその人物によって振り回されてしまいます。つまり、『その人物に聞かなければわからない』『その人物にしかできない』という状況になる為、その人物の体調や機嫌次第で業務の流れに影響が出てしまうのです。そして私は前々からこの状況に悩まされています。

私はある業務を M先輩から引き継ぐようにと上司から指示を受けています。その業務は会社ではM先輩しか把握していません。しかしM先輩は、恐らく傍目から見ても感情の起伏が非常に激しく、指示も威圧的で内容がまともに私の頭の中に入ってきません。理解ができないので質問をすると「俺は説明をしたのに、どうして人の話しを聞かないのだ!」との一点張り。やがて期日も迫ってくるので結局はそのM先輩が自分でする羽目になり、その状況をM先輩は上司に報告。そして今度は上司から「どうして君は言われた事もできないのだ!」と叱責されるという、まさに『華麗なる負のスパイラル』に陥っています。

これは私からの視点ですので、私寄りの言い分にはなってしまいますが、業務の流れに良くない影響が出ているのは明らかです。

そしてM先輩は以前からこのような状態であり、今後も変わることはありません。

 

かつて曹操には荀彧(じゅんいく)という名参謀がいました。長年に渡って曹操の右腕として献策し続け曹操の覇業を支えてきましたので、もはや荀彧は曹操にとって無くてはならない存在でしたが、ある日曹操は荀彧にこう問いかけたのです。

「君に代わってわしの為に策を立てられるのは誰だ?」すると荀彧は二人の人物を挙げますが、曹操は他の優秀な人物にも、荀彧と並ぶ官職になるよう推挙していました。

その後、荀彧は曹操と方向性の違いから反りが合わなくなり曹操によって自殺に追い込まれました。自身の最高の右腕として頼りにしていた人物であっても、組織として不都合な存在と判断すれば容赦なく排除したのです。

このように曹操は、ある人物に何かしらの問題があった場合、その人物によって組織全体が振り回されて業務が滞ることの無いように、代わりに同じ役割をこなせる人物を何名か用意していました。

新しい人材を採用するだけでなく、それ相応の人物を同じ部署内から推挙という形で昇格させるのです。このような組織強化の取り組みに関しては、魏の曹操は蜀の劉備に比べると遥かに上であり、劉備が亡くなった後の蜀は人材不足に悩まされ、諸葛孔明ひとりが重要な業務を全て背負い込み疲弊してしまう事になるのです。

 

「私が居なくても他に代わりはいる。」と言えばネガティブに聞こえるかもしれません。もちろんそのまま仕事を外されてしまうと言うリスクはありますが、他に誰も代わりがいなければ全てを背負い込んで疲弊してしまいませんか?

代わりがいなければ、どんなに疲弊しようが関係ありません。顧客がいる限り背負い込むしかないのです。

つまり、組織に属する人間にとって『代わりがいる』という事こそが一番のメリットであり、経営者は曹操のように先を見据えてこの仕組みを構築していく事が重要な役目なのです。